
Source: HUFFPOST
一目見て「かわいい!」と思ったあと、その製作過程を想像すると、少し後悔するかもしれない。
2016年9月、ニューヨーク、モービット・アナトミー・ミュージアムにて、世にも奇妙な剥製の展覧会が開催された。
この展覧会は、館長ジョアンヌ・エーベンシュタイン氏が世界中のコレクターに協力を訴えかけ、実現したものである。
以下は、モービット・アナトミー・ミュージアムの公式の展覧会概要をまとめたもの。

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【Morbid Anatomy Museum】この展覧会の一番の目玉は、なんといっても“子猫の結婚式”だ。1890年代に製作された、ウォルター・ポッターの代表作である。
この不道徳でありながら人の目を惹きつける子猫の剥製は、一歩間違えればただ悪趣味になりかねないところだが、見事な職人技によって優美な作品へと仕立てあげている。
ウォルター・ポッターは、独学で技術を磨き、ヴィクトリア朝時代のイギリスで活躍した剥製師だ。子猫をはじめ、ウサギやリスを擬人化した作品で知られている。それらの作品は150年もの間、彼自身が設立した美術館に展示されていた。が、2003年にオークションにかけられ、今では散り散りになってしまった。

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19世紀後半ヴィクトリア朝時代、イギリスの人々は、未知の世界への探検や、自然科学の発見に、熱狂していた。そんな中、剥製はイギリスの家庭に流行し、当時はありふれたものとしていたるところに飾られていた。
中流家庭のリビングにはガラスケースに入った鳥の剥製があったし、紳士の書斎ともなれば、“驚異の部屋”(ヴンダーカンマー)にずらりと並べた剥製のコレクションが欠かせなかった。どんな小さな村でも剥製師がいて、手芸やDIY の本を読むのと同じような感覚で、小鳥の腸を抜いて素敵なインテリアを作る方法が読まれていたのだ。
そんなブームの中で、「科学の標本」と「装飾的なアート」の区別があいまいになったとしても、なんら不思議ではない。

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自然保護や動物愛護が叫ばれるようになったのはごく最近のことだ。かつては、自然は広大で使い尽くせないほど資源がある、と考えられていた。野性動物は、毛皮や羽毛、骨などをとるための単なる「資源」とみなされていたのだ。
しかしながら当時だって、たくさんの猫がペットとして愛されていた、というのも事実である。
ここにある作品は、ある時代には普通だったものが、別の時代では異様に見える、ということを証明している。
時代が変わっても変わらないものがあるとしたら、それは「愛すべき興味の対象を、〈破壊〉しつつ〈不滅〉にしたい」という人間の奇妙な欲望である。
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