「私の名前は、SIMカード!」「アンドロイド!」インドの村で子供に変な名前をつける風習

ブーンディーの街。 Source: Wikimedia

TIMES OF INDIA】インド西部ラージャスターン州、乾いた丘にたつ古城が青い家々を見おろす美しい街ブーンディー近郊の村では、よくおかしな人名を耳にすることがあるという。

「“大統領官邸”はヤギの放牧に行っている」

「“Pradhan Mantri(テレビ番組の名前)”は街に買い物に行った」

医者が、お腹の痛い“アンドロイド”や“サムスン”に処方箋を書いてやるのも、めずらしいことではない。

勢いのある一流企業の名前や、立派な肩書き、携帯電話のブランドやその最新機器にならった名前を、この地の人々が名乗りはじめたのは、今にはじまったまったことではない。

ほかにも、SIMカード、不在着信、チップ、Rajyapal高等裁判所、などなど珍妙な名前をあげたらキリがない。

ラージャスターンの田舎の風景。 Source: Wikimedia

Ramnagar 村は地区役場から10kmほどのところにあり、おもに放牧を生業とする500人ほどの人々が暮らしている。村人たちのほとんどは、文字の読み書きができない。

「村人たちのなかには、しょっちゅう法を犯して、警察署や裁判所の世話になる人たちがいます。そんなときに、少しでも社会的権威にあやかろうと考えるのか、彼らは子供に、“IG(インスタグタム)”や、“SP(シークレットサービス)”“行政長官”なんて名前をつけたがるのです」と、村の教師は言う。

厳粛に静まり返った法廷で、裁判官は「被告人、インスタグラム!」などと言わなければならない。村に慣れた住人でなければ、思わず吹き出して、まわりからヒンシュクをかってしまいそうだ。

一方、ガンジーの熱烈な信奉者である“国会”さんは、子供たちにソニアやラーフルといったインドの伝統的な名前をつけている。

身体に障害がある“高等裁判所”は、気性が荒くて凶暴なことで知られている。彼が生まれたとき、犯罪で捕まっていた祖父の保釈金が裁判所から返ってきたので、そんな名前がつけられたのだ。

ラージャスターンの人々。 Source: Wikimedia

変てこな名前は Ramnagar 村に限ったことではない。同じ地方のナインワ地区では今、携帯電話のブランドや、携帯関連のアクセサリーの名前をつけるのが流行りだ。

ナインワの保健センターで登録係をしているラーメッシュさんによれば、このあたりの村では、“ノキア”“サムスン”“SIMカード”なんて名前を聞くことになるだろう、という。また、SNSのアカウント名をそのまま名前にしているところもある。

「はじめて聞いたときはびっくりしましたが、もうそんな名前を名簿に書くことにもなれました」

名簿には“スマートフォン”“アンドロイド”という名前ももちろんあり、今後新製品や新しいアプリが登場するたびに、新たな名前も増えそうだ。

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