
Source: Atlas Obscura
アフリカ、ガボン共和国オートオゴウェ州、オクロにあるウラン鉱床のなかには、完全に自然の力のみでできた世界最古の原子炉がある。
原子力は人間が発明したもの、と思いがちだが、実はそうではない。
今から20億年も前、オクロ・リアクターは、人知れず核分裂をはじめた。ウランを大量に含んだ鉱床に地下水が染み、核分裂の連鎖反応を引き起こしたのだ。
核分裂による熱で水が沸騰してなくなってしまうと、反応は減速して、やがて停止する。すると今度は、鉱床が冷えてきて、また地下水が染みこみ、核分裂がはじまる、という仕組みだ。
オクロ・リアクターはこの巧妙なサイクルを、数十万年ものあいだ繰り返してきた。
はじめは核兵器開発を疑われた
1972年5月、フランス、ピエールラットのウラン濃縮施設は、オクロの鉱床を調査して、深刻な懸念を抱いた。
鉱床にあると思われていたウランの濃度が、予測されていた数値と0.003% 違うことがわかったからだ。ほんのわずかな違いのように思えるが、専門家が異常に気づくのには充分だった。
彼らの脳裏にまっ先によぎったのは、なくなったウランが、どこかで核兵器の開発に使われているのではないか、という脅威だった。すぐにフランス原子力庁も調査に乗り出した。
だがその年のうちに、科学者たちは意外な発見をした。ここがおそらく世界で最初の、100%天然の原子炉であったことがわかったのだ。
ウラン鉱床が原子炉化したのはなぜか?
すべてのウラン鉱山がこのような核反応を起こすわけではない。世界中で、天然原子炉が見つかっているのは、ここオクロだけだ。
天然原子炉が発生するためには条件がある。
まず、ウランには、分裂しやすいもの(ウラン235)と分裂しにくいもの(ウラン238)があり、核分裂の連鎖反応が起こるには、少なくとも全体の3%は分裂しやすいタイプが必要だ。
また、核分裂が起きると、分裂したウラン原子から中性子が飛び出し、それが別のウラン原子に当たってまた核分裂を引き起こすのだが。このとき中性子が飛び出す速度が速すぎると、うまくウラン原子に当たらず、連鎖反応が起こりにくい。そのため、核分裂を持続させるためには減速材としての水が欠かせない。
オクロ・リアクターは、分裂しやすいウランと、水、といった条件を奇跡的に満たしていた、と考えられている。
天然原子炉は、ウラン鉱床の深さ数センチメートルから数メートルほどのところにあり、平均で100 kW相当の出力の反応を起こし、温度は数百度まで達していたという。
科学者たちは、核分裂の際に生じるキセノンガスの値を調べることで、原子炉が約 30分活動したあと2時間30分休止するというサイクルで核反応を起こしていたことまで突きとめた。
現在では、分裂しやすいウランは使いつくされ、全体の 0.7%のみで、核分裂を起こすことはない。
核分裂反応のあった場所は、3つの鉱床で、16か所見つかっている。
【参考サイト】Wikipedia:オクロの天然原子炉
電気事業連合会:原子の構造と核分裂
Atlas Obscura:Oklo Reactor
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