【連続殺人鬼】に手紙を送ったところ、返事がきたようです

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news.com.au】オーストラリア、シドニーに住むアマンダ・ハワードは、20年以上にわたって、連続殺人鬼たちに手紙を書いてきた。

「ある手紙は下品なポルノのようだったし、ある手紙は、勃起やセックスについて語りだしました。ときには彼らがゲームをしたがることもありましたが、私が『ダメよ。そんなことに関心はない』ときっぱり断ると、謝罪の言葉が返ってきました」

「リチャード・ラミレス(アメリカの連続殺人鬼であり、レイプ魔、不法侵入者、悪魔崇拝者)のような人たちが、私にこう言うんです、『おまえにこんなことをしてやりたい。あんなことをやってやりたい』私が私書箱を変えてしまうまで、それが続きました」

返ってくる手紙の中には、彼らの内に秘めた不気味さを匂わせるものもある。たとえば、死姦と食人にふけった“ジェニシー川キラー”ことアーサー・ショークロスの手紙はこうだ。

不安定な筆致で書きつけられたショークロスの手紙。Source: news.com.au

“Do you see me at night when you sleep?(夢の中で俺に会ったかい?)”

ハワードによると、この活動は、犯罪を解明する手助けになるという。

しかし、代償もある。

「“ツールボックス・キラー”のロイ・ノリスに、アイスピックを耳に突き立ててやると脅されたことがあります。彼が被害者にやったのと同じことです」かつて彼は共犯のローレンス・ビッテイカーとともに、少女たちを殺害する様子を録音し、それを法廷で流して傍聴人を震撼させている。

「何度か殺人犯の家族に後をつけられて、手を引くように脅されたこともあります」

「殺人鬼たちは、みなゲームをしてるんです。どの犯人も、獲物を惹きつける魅力を、出したり引っこめたりできる。彼らの前で弱さは見せられません。さもないと、やられてしまいます。手ごわい駆け引きになるでしょうが、ゲームに参加せざるをえません。相手がだれかによって、あなたが猫になることもあれば、ネズミになることもある」

ボビー・ジョー・ロングの髪の束。ハワードは、今でもぞっとするし、もう二度と触れたくないという。Source: news.com.au

ときどき、彼らがちょっとしたもの──あるいは髪の毛の束などを、送ってくることがある。ハワードは死刑囚監房に収監されているボビー・ジョー・ロングから送られてきた髪を見せてくれた。彼は過剰な性欲の持ち主で、フロリダで少なくとも10人の娼婦をレイプ目的で誘拐し、殺害した。最後の被害者にいたっては、26時間ものあいだレイプしつづけた。

手紙を送るようになったきっかけは、近所の住人が連続殺人鬼だったこと

ハワードにとって、すべての始まりは、1989~90年にかけて、シドニーの富裕層が住むノースショアの住宅街に、一人のサイコパスが出没したことだった。犯人は老婦人ばかり狙って6人殺害し、ほかにも何人かに性的暴行を加え、“おばあちゃんキラー”と呼ばれた。

この事件は、シドニーの位置するニューサウスウェールズ州で最も初期の連続殺人の一つに過ぎなかったが、世界中の研究者の関心を集め、当時ティーンエイジャーだったハワードにとっても深く印象に残った。

1989年、ハワードはシドニーの学校を卒業したばかりで、歌手とダンサーになるのを夢見ていた。

警察はプロファイリングした犯人像を発表した。それによると、犯人は若く、無職で、家族を恨んでいる邪悪なスケボー少年のような人物だという。

だが実際に逮捕されたのは、ジョン・ウェイン・グローバーという57歳のミートパイ会社の営業マンだった。

「殺人鬼の正体がいたって普通の人だった、ということは、とてもショッキングでした」と、ハワードは news.com.auの取材に答えている。

表面的には「彼らは並外れて“普通”だったのです」

ハワードがインタビューした連続殺人犯から受け取った手紙。Source: news.com.au

しかし、バックパッカー・キラーとして知られるアイヴァン・ミラットの事件が明るみになってから、ハワードは殺人鬼たちの“猫とネズミ”のゲームに加わって、彼らの心のもっと奥深くまで潜りこむようになった。

「アイヴァンは最初にコンタクトをとった一人です。彼もとても普通に見えます。なにしろ、彼の家は、私の家から見えるんです。ちょっと歩いて行けるくらい本当に近所なんです」

「気づいていないだけで、ショッピングセンターですれ違っていたかもしれません。近所の誰かの家の前にパトカーが停まったとき、初めて接点が生まれるのです。そして、非現実的に思えるような世界に、突然落っこちる」

“ナイト・ストーカー”こと、リチャード・ラミレス。手のひらには黒魔術のシンボルような五芒星が描かれている。(1985年、ロサンゼルスの法廷にて)Source: news.com.au

この体験によって、ハワードの長い旅がはじまった。──それは連続殺人鬼の内面へと踏みこんでいく旅だ。アマンダ・ハワードは現在、犯罪作家として活躍している。犯罪者の心理を紐解き、最悪の瞬間へと導いたものが何なのか探ること──それは彼女の犯罪小説の重要なテーマでもある。

手紙を送った殺人者のリストには現在 55人の名前が並び、その顔触れは様々だ。最も多いのはアメリカ人で、そのほかはオーストラリアやイギリス。一週間で 40通近い手紙を受け取るという。

にこやかな表情で写真に収まる連続殺人鬼、ダニエル・コナハン。ロイ・ノリスによる木炭の自画像。被害者の肉を食べたアーサー・ショークロスが描いた忍者のイラスト。Source: news.com.au

「私は彼らと会話がしたくて文通してるんです」

「アイヴァン・ミレットは先週12ページもある手紙を書いてきました。ただ聞かれたことに答えているだけの内容ではありません。彼らはほんの少しだけ、それ以上のことを書いてくれています。うっかり口を滑らせて、さらなる告発につながるようなことを書いてしまうことも、たまにあります」

ロバート・イエーツから贈られた折り紙。Source: news.com.au

ハワードは、オーストラリアでも“最も病んでいる連続殺人鬼”との称号を得たデビット・バーニーと文通をはじめたところだ。彼は妻のキャサリンとともに、被害者たちを使って、サディスティックな性の世界に身を投じた。

ハワードはこの事件をきっかけに、チャールズ・マンソン(1960年代末から1970年代初め、ヒッピー文化が盛んなアメリカで、若者たちを洗脳してカルト集団を形成し、殺人を教唆した)への関心を高め、文通相手に加えるようになった。

「お話したことは氷山の一角です。ここでは言えないことが、たくさんあります」

犯罪者のしかけるマインド・ゲームには応じない。アマンダ・ハワード。Source: news.com.au

殺人鬼たちはみな、凶行にいたるまでの様々な物語をもっている。邪悪なカリスマ性があることもあれば、同情を誘う不幸な話もある。心に闇のある人や、感化されやすい人は、たぶん殺人鬼の文通相手には向いていない。

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