老人の最期の願いに答えて、ホスピスに馬がやってくる【イギリス】

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Mirror】最後にもう一度馬にエサをやりたい。これは、イギリス、北デボン州ホスピスで死を待つ老人の、最期の願いがかなえられた瞬間だ。

草原にかこまれた静かな村 ブラントンで暮らしてきたパトリック・サンダースさん(87)は、その青春時代を馬たちとともに過ごし、強い絆を感じてきた。

看護士の女性は、馬がホスピスに連れてこられたときのサンダースさんの表情は、「一生忘れられないでしょう」と言う。しわがれた手をのばして馬の顔に触れた途端、老人の顔いっぱいに笑みが広がり、光り輝いた。

念願の対面がかなった3日後に、サンダースさんは亡くなった。

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この対面には、ホスピスのスタッフたちの優しい心遣いがこめられていた。地元の馬の保護施設に連絡して、最期の日々を過ごすサンダースさんのもとに馬をつれてきてきてもらえないか、と頼んだのだ。そして、馬のビクターがホスピスにやってきた。

その日の容体では、ベッドから起きだして馬と触れあうのが難しかったので、ベッドの方を外に運び出した。

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サンダースさんの手から、ポロミントを食べているところ。 Source: Mirror

サンダースさんはベッドに横たわったまま、リンゴと、ニンジンと、ポロミント(ミント味のラムネ)を馬にあげた。

その様子を見届けたサンダースさんの娘、ジェインさんは、

「ホスピスで父にこんな経験をさせてもらえるとは、思ってもみませんでした」と言う。「実際、2、3日とても状態の悪い日があって、そのときは正気を失っているようだったんです。でも、このすばらしい生き物と触れあって、嬉しそうな顔を見せたときには、すっかり元気を取り戻していました」

「馬は私たち家族の生活になくてはならないものなんです。だから本当に特別な瞬間でした。スタッフから、馬が父に会いに来る、と聞いたときには、たぶんベランダから眺めることになるんだろうな、と思ってました。それが、こんなに近づけるなんて!」そう感動したあと、少し考え深げに、

「けど、ホスピスって一体なんなんでしょう。スタッフの方たちは求められている以上のことをやってくれました。それでも、今話しているようなよい面を知ったとしても、たいていの人は“ホスピス”という言葉を聞くと震えあがるのでしょうね」と語った。

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サンダースさんは馬との対面からわずか3日で亡くなったが、ジェインさんいわく、残された日々は馬の訪問によってもたらされた幸福な余韻に満ちていたという。

ホスピスで過ごすあいだ、サンダースさんはスタッフに楽しい馬の話をして、父親から譲り受けた馬たちへの愛や、ビクターについても語った。彼は長年そうやって、馬の素晴らしさを人々に伝えてきたのだ。彼は後に妻になるウェンディにも乗馬を教え、それからまもなく結婚すると、66年間、幸せな結婚生活を送った。

馬がやってくる日もそばで手助けをしていた看護士のキャシー・ワッティンガムさんは、彼の馬への情熱は、天真爛漫そのものだ、と語っている。

「馬たちは間違いなく、彼の人生のなかでかけがえのないものでした。私たちのホスピスは、たまたま馬の保護施設の近所だったので、馬をつれてきて見せられないか、と考えたのです」

「電話を切ったあと、外を見ると、茶色くて美しい立派な馬が一頭、玄関の前に立っていました」

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「馬に触れたときの、彼の顔は忘れられません。彼らのあいだには本物の絆がありました。ホスピスでのケアが、素晴らしい出来事へと実を結んだ瞬間でした」

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「私たちに余命を長くする力はありません。でも、患者に残された日々に、活力を吹きこむことならできるのです」

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