何のため?砂漠に整列する無数の避雷針【ライトニング・フィールド】アメリカ

source:Dia:Walter De Maria

なにもない砂漠に並ぶ無数の避雷針。ここではそんなにしょっちゅう落雷が起こるのだろうか?そもそもこんな所に避雷針を立てて、なにを落雷から守るというのだろう?──

そんな疑問が浮かんできそうな光景が、アメリカ、ニューメキシコ州最大の都市アルバカーキから車で3時間ほどの荒野にある。この奇妙なポールは、正確には「避雷」ではなく、稲妻を引き寄せるために立っている。彫刻家ウォルター・デ・マリアによって、1977年に製作された、雷を作品の一部とした巨大なランド・アートだ。

『ライトニング・フィールド(稲妻の平原)』と名づけられた一帯には、400本もの磨きあげられたステンレスポールが、整然と並んでいる。ポールの太さは5cm、高さは約6m。それぞれ220フィート(67m)間隔に設置され、総面積は1マイル(1.6Km)×1Km四方に渡る。

人が一生のうちに雷に撃たれる確率は、1000万分の1だという(日本の統計)。それほどまでではないにしても、地平線ではなく、自分の目の前に雷が落ちる確率というのも、かなり低いものだ。
ライトニング・フィールドは、そんな決定的瞬間を、より安全に体験できる世にも珍しい場所だ。

とはいえ、稲妻を見られるかどうかは、オーロラ鑑賞と同じく、天候次第である。作品製作に出資し、現在も維持管理を続けているディア財団のウェブサイト上では、このように紹介されている。

「このライトニング・フィールドは、ただ見るだけでなく、散歩するのにもよく、時代を超えて体験してもらえるように創られています。稲妻が落ちるかどうかに関係なく、できるだけ長く滞在するのがおすすめです。日の出や夕焼けの時間帯は、特に」

その時間になると、ポールは光を反射して黄金色に輝く。針のように尖った先端は、すべて水平な平面上に並ぶよう計算しつくされていて、その人工的な規則正しさと、不揃いな自然が重なった空間の中にいると、不思議な感覚を覚えるという声もある。

作品の正確な所在地は、はっきりと公表されていない。

現在ここにたどり着く最も簡単な方法は、近隣の小さな町ケマードから、ディア財団の送迎を利用することだ。完全予約制の簡易宿泊所も併設されている。電子機器の持ち込みは禁止されており、緊急時は短波ラジオで財団の事務所と連絡をとるという。

ライトニング・フィールド付近は、実際に雷が多発する地域であり、運がよければ、暗雲立ちこめる天空から、目の前に稲妻が落ちる瞬間を目撃できるかもしれない。

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